「将来なりたい職業ランキング」はその時代や情勢を色濃く反映しており、特に近年は公務員やシステムエンジニア、看護師などが人気です。
動画投稿者、配信者といった職業は特に“最近らしい”ですね。
そんななか、少し前から安定して“なりたい職業”の上位に挙げられるのが「アニメーター」や「ゲーム制作者」です。
皆さんご存知の通り日本のアニメやゲームは世界的に人気が高く、若者を中心に身近な存在であることから職業としての人気が高いことが伺えます。
さて、今回は日本のアニメやゲームのこれからを支える人材が集う「日本工学院専門学校 蒲田校 CG映像科」の特別講義にお邪魔しました。
バンダイナムコスタジオのアートディレクター吉江秀郎さんと、日本工学院専門学校CG映像科の教員の皆さんにインタビューした様子もお届けします。
株式会社バンダイナムコスタジオのコワーキングスペース「クリエバ」がオープン!充実すぎる環境がクリエイターの働き方をサポート
日本工学院専門学校のCG映像科にお邪魔しました
東京都大田区の蒲田駅から徒歩2分。
下町情緒を感じる商店街を抜けると現れるのが日本工学院専門学校および東京工科大学の蒲田キャンパスです。
片柳学園創立70周年記念事業の一環として再整備された3号館は圧倒的な存在感を放ちます。
今回、日本工学院専門学校のCG映像科の皆さんに向けて行われたのは「バンダイナムコスタジオ特別講義」
ビジュアルアーティストについての説明のあとに、学生の皆さんからの質問や作品講評がありました。
講師を務めたのはバンダイナムコスタジオでアートディレクターとして活躍する吉江秀郎さん。
「鉄拳」シリーズや「ソウルキャリバー」シリーズのほか、初代PlayStation VRのローンチタイトルとして大きな話題になった「サマーレッスン」の開発にも携わっています。
東京五輪2020開会式で「ソウルキャリバー」「ニーア」「FF」など日本を代表するゲーム音楽が!「クロノ・トリガー」など懐かしいタイトルからも!
鉄拳シリーズといえば最新作「鉄拳8」が2024年1月26日(金)に発売予定。
風間仁をはじめとする個性的なキャラクターたちが最新機種のパワーを最大限に生かした緻密なグラフィックで表現されています。
まずはビジュアルアーティストという職業と、細かい職種についての紹介。
ちなみに、全く同じではありませんが株式会社バンダイナムコスタジオの採用Webサイトでも業務の概要や説明会の様子を見ることができます。
学生からの質問には吉江さんが真摯に回答。
吉江さんの専門外であるアニメーションの質問についても、社内のアニメーターの方に聞き込みをし、現場の生の声を届けてくれました。
最後に学生の皆さんのデモリールやポートフォリオに対してアドバイス。
作品のクオリティに関してはもちろん、ビジュアルアーティストの採用選考も担当している吉江さんの視点から“アートの魅せ方”についても言及されました。
絵のセンスが皆無の筆者にとっては、学生の皆さんの作品も立派に見えます。が、やはり吉江さんのアドバイスは的確。
ついつい聞き入ってしまいました。
講義のあとはバンダイナムコスタジオの吉江さんと、日本工学院専門学校の教員の皆さんにインタビューを敢行!
バンダイナムコスタジオ アートディレクター 吉江秀郎さんにインタビュー
― 本日はよろしくお願いします
吉江さん: よろしくお願いします。バンダイナムコスタジオ アートディレクターの吉江です。
― まず、学生たちがこれから良い作品を作っていくために必要な能力や心構えを教えてください
吉江さん:弊社はゲーム制作に特化した会社ですので、まずはゲームが好きでゲームを作りたいという想いの強い人が望ましいです。
能力面だと、ビジュアルアーティストであれば基礎的な絵を描く力にプラスしてオリジナリティを出せる人が良いですね。
― 学生への講評の中でもオリジナリティは重視されていましたね
吉江さん: 弊社ではリアルタッチな格闘ゲームからモビルスーツ、メカ、セルルックなアニメテイストまであらゆるキャラクターを作っています。
もちろん基礎の力も大事ですが、自分の中にオリジナリティがあってさまざまなアートを幅広く表現できる人が望ましいです。
― 今回のように学生の作品に対してアドバイスする機会はありますか?
吉江さん: 採用担当として専門学校や美術大学を訪れたり、弊社のインターンでも学生さんにフィードバックする機会は多いです。
― そのような場では、どういった部分を注視するのでしょうか
吉江さん: デモリールやポートフォリオの場合は構成も重要だと思います。まずは最も自信があって見せたい作品を“掴み”としてトップに持ってくるみたいな。
それに加えてやはり作品の幅広さも見たいですし、その人の味が出ているか、作りたいものがしっかり見えているかという部分も見ています。
― 今回は専門学校の講義でしたが、ご自身はどんな学生でしたか?
吉江さん: 私は大阪芸術大学でグラフィックデザインを専攻していました。
学校では商品のポスターやパッケージアートのようなマーケティングのパブリシティ素材などの勉強が多かったですね。
漫画研究会に入って漫画を描こうとしていたんですがそちらはうまくいかず、イラストだけを描いてました(笑)
― 初めからゲーム業界を志していたわけではないんですね
吉江さん: もちろん子供の頃からゲームは好きだったんですが、それを仕事にするとは思ってなかったですね。
出版や広告でグラフィックデザインに関わる仕事とか、漫画やアニメも好きだったのでイラストとか漫画を描く個人活動もしていたりとか。
― 結果的に第3の選択肢であるゲーム業界に足を踏み入れたと
吉江さん: 大学の先輩がインディーズでゲームを作っていたりして、身近な創作物として感じられたのもゲーム業界に入ることになったきっかけですね。
― プロとしてのキャリアの中で印象に残ったり転機になった作品はありますか?
吉江さん: 入社してからは格闘ゲームやアクションゲームばかり作っていたんですが、あるとき鉄拳チームから派生して「サマーレッスン」というゲームを作ったんです。
それまではずっと100人~200人という大きな体制でゲームを作っていたので、5人~10人というインディーズ的なノリでゲームを制作するという雰囲気を初めて知って、やっと自分もできた!みたいな(笑)
― 大学の先輩への憧れを実現できたんですね
吉江さん: 当初「サマーレッスン」を製品化する予定はなかったんですが、VRのデモとして作ったものが好評で発売することになりました。
こういう製品の成り立ちもあるんだなと。
ちゃんと製品になって、VR界隈では話題になってくれたので良かったです。
業界的にもVRは大きな転機でしたし、個人的にもこれまでとは全く違うゲームの作り方ができて非常に楽しかったという思いもあって、色々な意味で転機でしたね。
― VRゲーム制作は特有の難しさがありますか?
吉江さん: それだけで何時間も語れるくらいいっぱいありますね(笑)
いわゆる平面の画面で遊ぶゲームとは描画の制約もモデリングのやり方も全く違うんです。
当時は参考にできる作品も少なかったので本当に探り探りで制作していました。
周囲の友達からは「VRゲームは酔うから長時間できない。唯一酔わなかったのはサマーレッスンだけ」と言われて、VRに特化した自負もあったので「酔わないように作ったからね!」と誇らしかったです(笑)
― 最後に専門学校で学ぶ学生の皆さんにアドバイスをお願いします
吉江さん: 最初からアニメやゲーム業界に入ることを目指して学校を選んでいるというのは、私からしたら羨ましくて偉いなと思います。
ちゃんと将来を見据えて学校を選んだり勉強をしているのであれば、なおさら好きなものへの情熱は失わないでほしいですね。
とはいえ、好きなものばかりに執着しないでいろいろなものに目を向けてほしいとも思います。
よく「学生時代は何をしていれば良いですか」という質問もいただくんですが、自分の作品を作ってゲームばかりしていました、だけだと視野が狭くなってしまうので。
会社やチームに入ったらコミュニケーション能力が重要になってきます。
友達と旅行に行きました、イベント開きました、学園祭仕切りました、みたいな学生時代にしかできない経験は必ずどこかで役に立つはずです。
― 本日はありがとうございました
吉江さん: ありがとうございました。
日本工学院CG映像科教員の皆さんにインタビュー
― 本日はよろしくお願いします
先生方: よろしくお願いします。
― 日本工学院専門学校CG映像科にはどんな学生が入学してきますか?
鈴木先生: 幅広くいろんな学生が来ます。
入学時のスキルこそばらつきがありますが、皆さんゲームやアニメ、YouTuberなどの映像業界に興味があるという点は共通しています。
― 学科の授業について教えてください
鈴木先生:
業界で求められる知識は幅広いので1年次は色々なことを体験してもらうという狙いで、デッサンなどのアナログスキルからAdobeやAutodesk Mayaなどのソフト、業界や映像の基礎知識なども学んでいきます。
3DCGといってもキャラクターのモデリングやアニメーションなど様々あるので、まずは1年間で色々な経験ができるようにしています。
2年次には専攻が分かれるので、各学生のやりたいことに応じて選択授業などを展開して専門的なスキルを身につけていきます。
そして3年次には卒業制作としてチームでアニメーションや3DCGの大きな作品を共同制作していくという流れです。
丹治先生: 私はアニメーションを中心に教えています。
アニメーションでは現場で活躍するクリエイターの方を特別講師として招くことが多いので、基本的には自主制作のなかで学んでもらっています。
もちろん全体に与える課題もあるんですが、個人の自主制作に対してブラッシュアップのアドバイスをすることがメインで、あとは学生主体で応用してもらうという感じですね。
日本工学院専門学校 蒲田校 CG映像科
― 卒業制作は体外発表も行うのでしょうか?
鈴木先生: キャンパス内の片柳アリーナという施設で卒業制作の展示会を行っているほか、YouTubeチャンネル「日本工学院専門学校_CG映像科_蒲田校」やオンライン卒業展としてWebでも公開しています。
― 今回のように業界で活躍するクリエイターを招いた講義は定期的に行っているのでしょうか?
坂本先生: はい。特に前期は3年生に向けて企業説明会のようなかたちを毎週複数の企業さんにお願いしています。
説明会のあとは個別で作品講評を行っていただく時間もありまして、その企業さんや業界全体としての観点でアドバイスをいただいています。
― 学生の皆さんは定期的に現役クリエイターからのアドバイスをもらえるんですね
鈴木先生: はい。今回はこれから後期が始まるという節目だったので志望する学生も多いバンダイナムコスタジオさんにお願いしました。
― ほかにも様々な業界からアドバイスをいただくのでしょうか
神野先生: 先日はアニメーション業界から来ていただいて、その前は映像業界のVFXや実写合成の分野から来ていただいています。
主なジャンルはゲーム、アニメーション、映像の3つで、その中で細かい分野に特化した制作会社さんなどにも来ていただくことがあります。
― 学生の皆さんが志望する業界の割合はどのくらいなのでしょうか
神野先生: 私たちカリキュラムを作る側としてはゲーム・アニメーション・映像にそれぞれ3割ずつ進んでほしいなという気持ちはあります。
坂本先生: 年度によって変動が多少ありますが、例えば今年度の実績ではアニメーションに特化した企業1割、ゲーム専門企業2割、その他アニメ・ゲームを含む映像全般に携わる企業に4割というデータがあります。
― 志望する業界や大企業に就職できる学生の共通点や特徴はありますか
鈴木先生: 授業の外にも学びの場を持っていることだと思います。
色々な説明会に行っていたり、講座を受講していたり。専門知識だけではなく英語を学んでいたりなどですね。
神野先生: 学校としても1年生のときから劇団四季の「ライオンキング」を観劇したり「庵野秀明展」を鑑賞したり、バーチャルを創る人としてリアルを知る機会を設けています。
まず「(課題など)しなければならないことが確実にできる」そして「次は何をしなければいけないかを自ら思考して動くことができる」、そういう学生は自身の希望を叶えていると思います。しっかり自主制作も含めてポートフォリオやデモリールを作成し、企業にプレゼンできる準備をしていますね。
大人数が関わる作品の中で、自分の立ち位置を把握し、バトンリレーが上手にできることも大事です。相手のことを考えて行動できる学生はしっかり就職していっています。
― 本日はありがとうございました
先生方: ありがとうございました。
未来のアニメ・ゲーム業界を担う人材に
今回は日本工学院専門学校CG映像科の特別講義にお邪魔した様子をお届けしました!
駅に近い広大なキャンパスと整った設備で学べる環境は最高の一言。
定期的に業界の方からアドバイスを受けられる機会もあり、アニメやゲームのCG映像制作に興味がある中高生の皆さんにとっては有力な進学先でしょう!
2023年11月にもオープンキャンパス+体験入学が開催される予定なので、ぜひご検討ください。
以上、特別講義レポート&インタビューでした!