10月29日(金) から、31日(日)の3日間にわたって開催された「2021年度武蔵野美術大学芸術祭」(以下 芸術祭)
毎年3万人以上の来場者が訪れることで有名な本校の芸術祭ですが、今年度は新型コロナウイルスによる影響を鑑み、史上初のオンライン開催という形で、バーチャル空間での作品展示や、オンラインショップでの作品販売、ライブ番組配信等が行われました。
初の試みが殆どの状況下で、芸術祭全体の企画・運営を担う実行委員会の学生の皆さんは、どのようにして準備を進め、開催まで至ったのでしょうか?
今回、Saiga NAK編集部は、武蔵野美術大学(以下 ムサビ)にコンタクトを取り、芸術祭実行委員の学生さんと直接インタビューをさせて頂ける事になりました!
さらに、ライブ番組配信「MAU LIVE」が行われていた、学生自ら製作した特設スタジオもご紹介します!
本取材は10月31日に行いました。
武蔵野美術大学へ訪問
芸術祭3日目の10月31日、雨の滴る武蔵野美術大学に到着。
本来であれば、学生の他に大勢の来場者で溢れる学内ですが、今年は残念ながらほとんど無人・・・。
ふと正門横の掲示板を見ると、今年度の芸術祭のポスターが掲示されていました!事前にホームページと公式Twitterで拝見していましたが、こうして実物を目にするとテンションが上がりますね!
待ち合わせの場所に移動し、実行委員会の方とご挨拶をしたのち、早速インタビューをさせて頂きました!
実行委員会の代表2名に直撃インタビュー!
今回、実行委員会を代表してインタビューを受けて下さったのは、こちらのお二人!
- 矢部 咲希さん (基礎デザイン学科 2年生 / 実行委員会執行部 広報部 副課長)
- 千葉 篤樹さん (基礎デザイン学科 2年生 / 実行委員会執行部 展示部部長)
コロナを理由に芸術祭の歴史を止めたくなかった
─ 今年度、初のオンライン開催に至った経緯を聞かせて下さい。
矢部さん:毎年、芸術祭は春休み頃から準備を進めているのですが、昨年度はコロナの感染が拡大し、先が読めない状況のため止むなく中止にせざるを得ませんでした。ですが今年は、これ以上コロナを理由に芸術祭の歴史を止めたくなかったので、初の試みではありますがオンラインでの開催となりました。
─ 芸術祭といえば、学生さんの作品展示が特徴的ですが、今年はバーチャル展示での実施でしたね。
千葉さん:はい、今年はバーチャルSNS「cluster (クラスター)」(開発:クラスター株式会社)を利用して、バーチャル空間に有志学生の作品を展示しました。やっぱり、作品作りを生業とするムサビ生による催しなので、作品展示はみんなやりたいだろうし、どうしても外せないと思ったので。
本来、講義室や展示室で行う作品展示を、どのようにしてオンライン開催するかみんなで検討していた時、他の美術大学ではWebサイト上で展示を行なっている事を知ったのですが、「それ以上にもっと新しいことがやりたい」という意欲がありました。そこで、ムサビの卒業生有志の企画展示「バーチャルムサビ展」の存在を知って、挑戦してみようという方針になりました。
今年のために「オンライン部」を新設
─ オンライン開催に向けて、どのような準備をされたのでしょうか?
矢部さん:まずは、部署の整備と担当業務の振り分け、そしてそれに伴う新入部員の募集が急務でした。
一部の仕事は引き継ぎが出来ましたが、実地開催がない以上、当日構内の巡回をする「警備部」などの部署はお休みせざるを得なくなってしまうので・・・。
さらに今年は、オンライン上でのコンテンツ展開が主軸になるという事もあり、そちらの面を強化するため、新たに「オンライン部」を新設しました。
─ 「オンライン部」ですか!
矢部さん:元々、宣伝活動を担う「広報部」傘下の「Web班」が存在したのですが、Web媒体やSNSでの宣伝がメインになるため、一つの部署として独立しました。
昨年(2020年)の10月に、大学全体に向けて実行委員会の新入部員を募集した際に、オンライン部の部員も同時に募りました。人数はそこまで多くないですが、見識がある学生が集った少数精鋭の部署になっています。
芸術祭の公式サイトも、最初は外注の予定だったんですが、ノーコードでWebサイトを作成できるサービスを利用し、学生主体で作成しました。
難航した学生間のコミュニケーション
─ オンライン開催の準備期間、苦労した点などはありましたか?
千葉さん:展示部は、clusterのワールド実装などは有識部員に一任して、他の部員は展示を希望する学生(参加者)の対応がメインでした。ただ、これまで対面で行っていた参加者説明会や申し込みを今年は非対面で行わねばならず・・・。
説明会はZoomで、フローなどの詳しい説明は動画にしてYouTubeで限定公開し、申し込みはGoogleフォームで行ったのですが、完全オンラインでのやり取りは参加者の顔も反応も見られないので、伝わっているか不安でした。
─ どうしても一方通行になってしまうのですね。
千葉さん:どうにかして一対一での話し合いが出来ないか模索した結果、僕はDiscordのチャットを利用したやりとりを提案しました。
それでだいぶ円滑にはなったのですが、中には、連絡をちゃんと確認しない人が居て・・・。メールをしても見ない、電話をしても来ない・・・ムサビ生特有なのかわからないですが、そういう人が多くて(笑)
─ ・・・元ムサビ生として、耳が痛いですね(笑)
千葉さん:(笑) あとは、開催直前・・・作品の提出もかなり難航しました。拡張子の問題だったり、ファイルサイズの問題だったり・・・。バーチャル上という制約のある空間である以上、こちらから細かな指定が必要だと痛感しました。
加えて、今回は実行委員会同士の部員会議といったやりとりも常にオンライン上で進めてました。どうしても授業後の夜9時以降など限られた時間になってしまうのですが。
展示部は8月ごろに作業のために一度学内に集まったんですが、初対面の人は「あ、そんな顔だったんだ」となったり・・・。
矢部さん:広報部では、今でも部員の顔を知らない人が結構いますね(笑)
この状況下でこそ生まれたテーマ
─ やはり、他の部員や学生と対面で会わないと実感が湧かない部分もあるのですね。
矢部さん:そうですね・・・。ただ、「オンライン開催」の負の面だけを見て欲しくはなくて。今年のテーマである「電脳都市武龍」(でんのうとしむーろん)は、今年、この状況下だからこそ生まれたテーマだと思います。
例えば、今回スタジオに設置したオブジェには、史上初の試みで電飾を使用しています。例年はエントランスなどに設置しているのですが、安全面の問題などで電飾の使用は難しいので、ネオンの演出は今回だからこそ出来た事の一つです。オンライン開催だからこその体験を目指して私たちも尽力してきたので、参加者の方にもガッカリした気持ちではなく、楽しんで頂けたらな。と思っています。
初の試みで見えた改善点を、次の年へ
─ 最後に、ご自身の想いや、今回のオンライン展示をきっかけにムサビの芸術祭を知った方に向けたメッセージをお願いします。
矢部さん:今回、史上初のオンライン開催という事で、我々も不慣れな点が多く、大小様々なトラブルもありました。来年度は、オンライン開催か現地開催か、どのような形態になるかまだわかりませんが、今年できなかった部分は改善を重ねて、作り上げていきたいと思っています。今年ちょっとでも興味を持って頂けた方には、来年もぜひご注目頂きたいです。
千葉さん:オンライン展示という全く前例がない事をやる中で、先輩がこれまでやってきた(オフラインの)展示のやり方を無理やり当て嵌めてスケジュールを組んだりしていたんですが、やはりもっと改善しなくてはいけない点があるな、と感じました。ただ、改善点が見つかったのは大きいと思っています。来年もオンライン展示をする事になった際は、今年よりもっと良いものが出来上がる筈ですので、次回もどうぞご期待下さい。
─ この度はインタビューにご協力頂き、ありがとうございました!
超(スーパー)クオリティ!特設スタジオに潜入
最後に、3日間、「武蔵野美術大学芸術祭2021」YouTubeチャンネルにて生配信をお届けしていた、実行委員会制作の特設スタジオにお邪魔しました!
インタビューでも取り上げられた電飾を使ったネオンの演出や、美術大学ならではの小ネタ、細部までディティールにこだわったオブジェクトの数々をご紹介します!
画面越しでも素晴らしいクオリティでしたが、目の前で見るとかなりの迫力・・・!
取材にご協力下さった実行委員会のみなさん、本当にありがとうございました!
本記事で武蔵野美術大学の芸術祭を初めて知った方も、来年度、現地での開催が叶った暁には、是非一度足を運んでみて下さい!