eスポーツの競技種目において花形とも言えるのが「格闘ゲーム」です。
RTSやFPSはプレイヤーが有利なのか不利なのか、拮抗しているのかがある程度そのゲームを知っていないと理解しにくいのに比べ、一目で有利不利を確認できる体力ゲージの存在や画面内に出てくるキャラクターの少なさから状況を把握しやすく、観客側にとって盛り上がりが分かりやすいことも対戦格闘ゲームが花形となっている所以でしょう。
ゲームジャンルを表す3文字では「FTG」と表記されるのが一般的で、「Fighting Game(ファイティング ゲーム)」の略称となっています。
格闘ゲーム(FTG)とはどんなゲーム?
キャラ同士の格闘を描いたゲームはファミコンの頃から存在しましたが、ジャンルとしての知名度、プレイ人口を増やしたのはアーケードゲームから発売され、様々な家庭用ゲーム機にも移植された「ストリートファイターII(ツー)」が最も有名でしょう。
以降様々な格闘ゲームが作られ、アーケードの映像美やなめらかな動きを家庭でも再現できた「鉄拳」や「バーチャファイター」などが日本はもちろん海外でも親しまれ、ストリートファイターシリーズを含め何作もの格闘ゲームが作られる切っ掛けとなりました。
ただゲームを始めるにあたって技を出すための複雑なコマンドを覚え、それを出すための正確な入力が必要など初心者にはハードルが高く、ゲームセンターなどでも初心者狩りなどの一部モラルの低い行いがあったために、他のゲームジャンルに比べると競技人口はかつてに比べると少なめの傾向があります。
それでも観客側として見れば試合状況が分かりやすいので、大会などでは盛り上がりやすくeスポーツの中でもプレイヤー観客共に人気の高いジャンルでもあります。
格闘ゲーム(FTG)の代表的なゲーム
eスポーツで特に人気がある格闘ゲームを紹介していきます。
ストリートファイター(Street Fighter)
CAPCOMが1991年にアーケードゲームとして発表した、「ストリートファイターII」は格闘ゲームの代表作でもあり「ストツー」という愛称でも親しまれています。
名前にII(2)が付いている通りストリートファイターという前作があるのですが、操作方法が特殊で現在のような格闘ゲームとは少しジャンルが異なるので、シリーズとしてはカウントされないことも多い作品となっています。
II、Zero、IIIと2D路線から、IVの3D路線へ変更し原点回帰を狙いとした物が再びヒットし、かつてのプレイヤーや新規プレイヤーを呼び込むことにも成功し、現在はV(5)まで発売されてeスポーツ大会はもちろん、国内外の格闘ゲーム大会でも用いられることの多いゲームです。
日本人格闘ゲーマーである「梅原大吾」氏は10年に一人の天才ともよばれ、海外大会でも優勝を収めテレビなどでも取材をされるなど国内外でストリートファイターシリーズに強いプロゲーマーとして知られています。
2018年9月東京ゲームショウでおこなわれた「ストリートファイターV アーケードエディション」での大会では賞金総額1,000万円、トップ8にはプロライセンスが発行されるなどで話題になりました。
大乱闘スマッシュブラザーズ
任天堂の家庭用ゲーム機NINTENDO64で発売された、現在でも人気の高い格闘ゲームで「スマブラ」の愛称でも知られています。
格闘ゲームが初心者へのハードルの高さで人気が落ちつつあった頃、「簡単な操作」「下手でも狙える一発逆転」「様々な人気ゲームから起用されたキャラクター」が人気を呼び、その後もヒットが続く人気タイトルへと急成長しました。
初期は任天堂から発売されたタイトルのキャラクターのみ出演だったものが、現在はメタルギアソリッドからソリッドスネーク、ロックマン、ストリートファイターシリーズのリュウなど他会社のキャラクターもコラボとして参加する一大作品となっています。
ただ元々は難易度が上がりすぎてプレイヤーが減少しつつあった格闘ゲームのアンチテーゼとして作られたゲームであるため、難易度は低く設定されており、アイテムを入手しそれを使っての一発逆転や、複数プレイヤーがつぶし合って棚ぼた的勝利を得られるため、他の格闘ゲームとはかなり毛色の違うゲームとなっています。
任天堂はスマブラのジャンルを「対戦アクションゲーム」としており、それらのいきさつを知っているゲーマーからはスマブラを対戦ゲームとして見ない人もいます。
ゲームとしては海外でも人気は高く、Smash’N’Splashという大会では参加者が全部門合計で2000人を超えるなど非常に大規模なものとなりました。
鉄拳
鉄拳はBANDAI NAMCO(旧NAMCO)が製作した、格闘ゲームです。
SEGAが作ったバーチャファイターはポリゴンを用いた3Dキャラクターを積極的に使用し、キャラクターの見た目こそカクカクではあったもののその滑らかな動きは多くの格闘ゲーマーを驚かせました。
それに触発されポリゴンを用いながらも美麗なキャラクターを表現し、3Dの滑らかな動きも併せ持った「鉄拳」シリーズはバーチャファイターと同様に家庭用ゲーム機にも移植され、互いに競い合う人気作となりました。
また近年はポケモンともコラボし「ポッ拳 POKKEN TOURNAMENT(ポッケン トーナメント)」と鉄拳のキャラクターをポケモンに置き換えた格闘ゲームがアーケードやニンテンドースイッチなどで発売され人気を得ています。
アメリカでおこなわれたEVO(Evolution Championship Series)に次ぐ大規模な大会「CEO(Community Effort Orlando)」ではともにBANDAI NAMCOが製作した「鉄拳7」と「ドラゴンボールファイターズ」が用いられ、鉄拳の方では残念ながら日本人選手が決勝戦まで残ることはなかったのですが、ドラゴンボールファイターズはトップ8の半分が日本人、決勝も日本人同士の勝負となったそうです。
MARVEL VS. CAPCOM
格闘ゲームはリュウや春麗、三島平八など魅力あるキャラクター、あるいはスマブラのマリオやリンクなど有名なキャラクターを起用していることで人気を左右することもあります。
「あのキャラクター同士の対戦を見てみたい」という需要がある中生まれたのが、MARVEL作品のスーパーヒーローなどがCAPCOMゲームのキャラクターと対戦する「MARVEL VS. CAPCOM」です。
「MARVEL VS. CAPCOM」は初期はストリートファイターII同様、2Dのベーシックで硬派な格闘ゲームだったのですが、キャラクターに魅力を感じてプレイする層にとっては通常の格闘ゲームだと難易度が高すぎるため、近年の作品になるにつれボタン連打でコンボが出る機能を付けるなど、CAPCOMの格闘ゲームの中では初心者に優しい部類の作品となっています。
アメコミを親しんでいるアメリカを含めた海外層にも人気が高く、タッグシステムで操作キャラクターを切り替えたりなど、習熟のために固定キャラを使うのが通例となりがちな格闘ゲームの中では特定のキャラクターに縛られないプレイスタイルがこのゲームの特徴でもあります。
アメリカ・ラスベガスで開催された世界最大規模のeスポーツ大会EVO 2017では「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3(アルティメット マーベル VS. カプコン 3)」が用いられ、春麗、モリガン、フェニックスを操ったアメリカのRyanLV氏が優勝を飾りました。